わたしは今、真っ黒な世界にいつの間にか迷い込んでいて、出ることができないでいる。だけど、この真っ黒な世界は、外から見た記憶がある。中心に向かって黒さが濃くなり、逆に表層に向かって薄黒い、濁った靄のようなものに覆われている。そして、数年前までは私はこんな世界を傍観者として見たことがあって、どこかに出口があることも知っている。私はこの中を今、一秒一秒必死にもがき出口を探している。たまに空のような、水面のような光がチラリと差し込むことがある。そっちを目指す。だけど、いつも足を黒い何かに引っ張られ、戻されてしまう。早く、出口に辿り着きたい。