この作品は、描き手の純粋な視線を通して捉えられた作品です。犬と人間とのあたたかな結びつきと、散歩という日常の「歓喜」を感じさせます。 画面を圧倒的なスケールで占めるのは、一見すると抽象的な力強さを持つ犬の姿です。太く力強い輪郭と筆致で描かれた茶色と黒の躯体は、躍動感と同時に親密な温かさを感じさせます。犬の瞳はほとんど見えず、感情は主にその大きく大胆な表情によって伝えられています。 右下には、鮮やかな青い服と紫の髪をまとった人物が、犬を見つめるように控えめに描かれています。この人物は、犬の強烈なエネルギーを受け止め、支える存在として描かれており、両者の間に確固たる信頼関係があることを示唆しています。 背景は、緑の樹木、土や泥のような褐色、そして空の青と水色が混ざり合い、抽象的ながらも自然の中のざわめきを感じさせます。にじみやかすれといった偶然性を活かしつつ、厚塗りで力強いマチエール(絵肌)を作り出しています。 本作は、日常の一コマを、記憶と感情のフィルターを通して極限まで拡大し、再構築した作品と捉えられます。
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