本作は、陰陽道で用いられてきた呪符「急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」の精神をもとに、 加賀隼介が独自の形象によって再構築した“現代の護符アート”である。 陰陽師が扱った符は、言葉そのものが力を持ち、 その周囲を取り巻く線は“気(き)の流れ”を視覚化したものとされてきた。 本作では、その「気」を色と曲線の連なりで描き、 目には見えない結界の息づかいを一枚の紙に封じ込めている。 描線は下書きを持たないため、加賀自身の祈り・呼吸・無意識の動きがそのまま形へと変換され、 結果として「魂を宿す符」としての性質が強く現れる。 本作は、古神道・陰陽道・密教・修験道などが交わった “日本固有の神仏習合の精神世界”を、 現代アートの文脈で再び甦らせる試みでもある。
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