視力0.7は普通自動車運転免許の取得に必要とされる最低限の視力であり、学校の教室なら、一番後ろの席から、かろうじて黒板の文字を判別できる境界線。一山眼鏡(いちやまめがね)を購入した。鼻梁に直接かかるその構造は、レンズを通して得られる矯正視界と、何の補正もない裸眼の視界を同時に存在させる。この眼鏡は、私の視界を二つの異なる世界に引き裂いた。レンズの上部に広がるのは、近視のままの裸眼がとらえる曖昧模糊とした世界。輪郭すら定まらず、ほとんど何も見えないその領域は、日常の機能性を拒み、根源的な不安を掻き立てる。それは「見えないことへの恐怖」そのものであり、私の存在の不確かさを告げている。一方、レンズの下に広がるのは、矯正視力0.7が形づくる秩序の世界。社会的な機能性を保証する最低限の境界線であり、集団の中で世界を判別できるとされる、ぎりぎりの視界である。しかし、この「見えることの安堵」は長くは続かない。その先にある、より鮮明な真実を求められる場面では、この視覚は真実をとらえきれない「見せかけの認識」として、その欺瞞をさらけ出す。「見えないことの恐怖」と「見えすぎることへの不安」。二つの視界のずれは、「見るべきもの」と「見えているもの」のあいだに潜む、認識の不確かさを鋭く突きつける。
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