街を歩きながら、写真について考えます。フィルム写真の粒状性は、物理的な銀粒子や染料粒子がランダムに並ぶことで生まれます。そのため、画像全体に細かな点描が散らばるような有機的で柔らかい印象が生まれます。誰かがそっと鉛筆で描いたような空気感が漂い、人の鼓動のような温もりが写真に宿るのです。一方で、デジタル写真のノイズは撮像素子の電子的な信号誤差や熱、回路ノイズによって生じます。画面にランダムなカラーポツやザラザラした質感、ピクセル単位の乱れとして現れ、人工的で規則的な四角っぽさが目立つ特徴があります。最新の機種ではノイズ成分が抑えられ、シャープで清潔感のある仕上がりになることもありますが、時には“汚れ”として排除したくなることもあります。街のノイズも同じように、人の声や音楽、作業音などが重なり合い、ノイズミュージックのような混沌を生み出しています。フィルムの粒状感が生み出す柔らかな印象は、都市のざわめきや不揃いな音に似ており、デジタルノイズは規則的に並ぶピクセルが奏でる人工的な雑音のようです。二つのノイズは、人間らしい温度や現代の気配にそっと寄り添いながら、都市の風景にささやかな輪郭を与えてくれるのです。フィルムとデジタル、そして街のノイズ。それぞれのざらつきが、世界の複雑さや美しさを静かに記録していくのだと思います。
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